「夕鶴」木下順二 原作


 日本文学の最後の授業で「夕鶴」の朗読劇をすることにした。
みんなで一つの作品を演じることは大学時代のよい思い出になるだろうと考えたのだ。


 中学生のとき、クラスで「夕鶴」を演じたことがあり、今でも鮮明に記憶に残っている。
あのとき、つうの役は転校してきた色の白い美しい少女で、役柄にぴったりだった。与ひょうの役はクラスで一番の男子で、運ずと惣どの役は、あまり成績の芳しくない二人だった。その二人がすごく上手だったのだ。与ひょう役より、ずっと情がこもっていて、インパクトがあった。それ以来、二人を見直し、人間成績だけではないんだ、と思いましたね。ーーー「夕鶴」は好評で、隣村まで出張公演に行った。


 あのとき、わたしは大道具係で舞台の背景や小道具を準備した。大きな背景を描くのは初めてなので、白い大きな布を前にワクワクしましたね。夕日に染まる鶴の絵は我ながら満足するものだった。
 ーーー台本はどうしたんだろう? きっと担任の教師が書いたんだ.....。


 それを思い出して、早速、台本作りにかかった。
けっこう、台詞を覚えているもんで、すらすら出てきた。朗読劇だから暗記する必要はないが、言いやすい台詞にし、教えた文法に置き変えた。


 朝から晩までパソコンの前で、ああでもない、こうでもないと台詞を直していた。
夜中までかかって、台本は出来上がった。 10人のグループ✖️4組で競い、優勝したチームには賞状とプレゼントをあげる予定だ。気分を盛り上げるために背景の絵も描こう。我ながらいいアイデアだと思う。ーーーん、まあ、自画自賛