名を名乗れ....!


 縄文時代中期の土器は器面に多様な原体(繊維を撚った縄紐)を使っている。縄文土器焼成が600度と甘い上に、出土状況が良くないとなにがなんだかわからない。施文した原体がわからないと作図のしようがない。それで、
 ーーー誰が作ったんだ? 名を名乗れ....! となる。


 ま、6000年前の縄文人に怒ってもしようがないんだけどね。
自分で作った原体の虎の巻を開いて、縄を撚って油粘土に転がしてみたり、土器に粘土を押し付けてスケッチして同じものを作ってみたりと時間ばかりかかる。タイに戻る期限もあるので、のんびりと考えている時間がない。
 ーーー終わるんだろうか....。と不安に思いながら、20日間も朝早くから夜中まで机に向かっていた。

 
 最後の1週間は手が笑って力が入らなくなった。そこで手首を骨折したときのギブスを使用した。なんとか鉛筆が持てて、作図作業は終了した。
 ーーーは、終わったぜ! いつものことながら、やれやれです。


 今回のヒット土器は壺。手びねりなのに素晴らしい丸みで、気品がある。
その辺の陶芸家もかなわないだろうね。なぜなら、土器は乾燥させるときに縮むし、壺だとたるんだりする。美しいフォルムを作るには計算が必要だ。縄文人、なかなかなもんですね。


 北海道で初めて出土した土器、というのもあったけれど、わたしはこの壺が一番良かったね。
なにはともあれ、無事に終わって良かった。