ハミング


 朝、ゆったりとしたリズムのハミングで目覚める。
それは若い女性の声で夢うつつのわたしを幸せな気分にしてくれる。これは夢?現実?と惑わし、もしかしてここは天国かも?というくらい素敵な声なのだ。


 だれだろう? お隣りのミックがよく歌を歌っているので、「ねえ、朝 ハミングしてる?」と尋ねると「チャールズが朝早く起きて勉強しているから、それじゃない?」という。チャールズは「音楽はギターだよ」とのこと。ーーー違うねぇ.....。


 夕暮れ時、ご飯支度をしていたら、また聞こえてきた。
お隣りさんはまだ帰っていないときなので、反対側の壁に耳を寄せると、ハミングがはっきりとしたメロディになった。
 ーーーあらら、中国のお嬢さんだったのね。


 8月から二人の中国人教師がやってきた。それぞれ別の部屋に住んでいるが、いつも行き来しているらしくノックの音と中国語が聞こえる。ここの大学は不便なところで、二人そろって自転車で買い物に出かける姿をよく見かける。その奥の部屋には車を持っている中国人カップルが住んでいるのになぜか二人を誘わない。


 いいね、ハミング。外国に暮らしているとストレスを伴うが、彼女もそうなのかもしれない。中国のお嬢さんのハミングはわたしを優しい気持ちにさせてくれる。