ごはん食べた?

 タイでよく使われるこの言葉を聞くと、やさしい気持ちになる。
仏教のタンブン(寄贈)からきた習慣だと思うが、学生、知り合い、知らない人までも、会うと「キン、カ〜オ、ルーヤン?(ごはん、たべた)」と聞いてくれる。気軽な感じであいさつのよう使われる。

「キン、レ〜オ(食べたよ)」と答えることが多いが、学校の同僚が食べている時に「まだよ」なんて答えるものなら「食べて行きなさい」と、その輪の中に入ることになる。
 バンコク行きのバスを待っていて、夕食中の輪の中から「ごはん食べた?」と聞かれて、そのまま座り込んで晩ご飯をごちそうになったことがある。


 最初に旅したモロッコでもそう言われて、この国の人たちはなんてやさしいんだろう、と感激したものだ。もちろんごちそうになった。
 昨年旅したミヤンマーでも、お寺で砂絵を売っていた若者たちが「クミンサー ビービーラー(ごはんたべた?)」と食べるマネをしたので、食事中の輪の中に座り込んでお弁当をごちそうになった。楽しそうにご飯を食べている私たちを、欧米人の観光客が不思議そうに見ていたが、みんなで食べるのは楽しく、知らない食材に興味津々でどんなものだって美味しい。
 旅をしていて「ごはん食べた?」と誘われるのはとても嬉しいもので、わたしも友人には「ごはん食べた?」と聞くことにしている。