鯛やき

 
 友人が勤めるベンジャマ校のイベントで、鯛やきが好評だったそうな。
ヒロ子さんは同僚のタイ人の日本語教師に頼まれて、はるばる日本から南部鉄の鯛やき器を運んで来たと言う。
「えっ、わたしだって食べたいわよ!、あつあつの鯛やきにお茶があったら最高ね」と言ったら、
「じゃあ、お昼につくりましょう」と言うことになった。


 仮住まいの小さな部屋で、タンボールのテーブルの上にポータブルのガスコンロを置き、粉をふるい卵を溶いて、鯛やきを焼いた。
「生徒たちがね、鯛のまわりのエンガワをハサミで切るのよね、これが美味しいのに」と言いながら、せっせと鯛やきを焼いてくれた。小さな部屋に香ばしい匂いが立ち込める。
「う〜ん、いい匂い!」
 焼きたてのあつあつのをほうばると、懐かしい味がした。鯛のエンガワがばりっとして、中にはとろけるようなアンコがしっぽまで入っている。
「う〜ん、しあわせっ!」と言いながら、ぱくぱくと四匹もほうばってしまいました。