ポカルデ▲5800m&カラパタール5550m への山旅

 
 この山旅は、昨年10月アンナプルナBCへトレッキングした時に思いついた。

素晴らしい山々を眺めるのもいいけど、「やっぱり山は登らなくちゃね」と何だかどこか満たされない気分だったのだ。
 ネットで山を検索していて、アイランドピーク登頂のとき、チュクンからのローツェ南壁が素晴らしかったのを思い出した。「もう一度見たい」と思い、カトマンズで現地エージェントのシェルパと相談し、日程と費用の打ち合わせをしてタイに戻った。
 山岳会も既に退会している私の声かけに乗ってくれたのが、山仲間のゴットンとその友人、そして娘の男友達だ。ゴットンと友人のフジちゃんは「9月にバルンツェ▲7000mを計画しているのでプレ登山に丁度いい」と快く参加してくれた。



 さてさてメンバーもそろってしゃんしゃんと事が運ぶように見えたが、肝心の私がBCに入る前日に、ちょっと頭痛がしたので痛み止めを飲んだことが災いし、胃痛に見舞われ不調。登攀技術のあるゴットン隊長も不調で、BCまで到達できず、いったい私たちのポカルデはどうなることやら、と目の前は真っ暗闇。
 それをよそに、ヒマラヤ初デビューのフジちゃんと娘の友人のトモ君は快調で、頭が痛いとは言うものの、食欲あり、快眠、快便で、全く問題なし。びっくりしたなあ、もう。


 ラッキーだったのは、ディンボチェでエベレストのルート工作を終えた若いシェルパ5人が休暇に来ていたのに出会ったこと。エベレストを7回登頂している一番強いシェルパが、バイトで私たちのポカルデ登山のサポートをしてくれることになったのだ。
 彼はデイジンさんといい、ザイルをもってポーターとともに先行し、BCを設置してくれた。私たち3人はガイドのデブラムさんと一緒に行動していたが、ゴットン隊長がひとり離れてしまった。雪も降り出し、デブラムさんが「もう、先生はBCに入るのは無理」と判断して、荷を下ろしたポーターと一緒に隊長を探しに下山した。

 ルート途中に残された私たち3人は、まず水分を取り「寒いから、歩こう!」と励まし合って、BCを目指した。
しかし、雪のためルートは定かではなく、地図上のBCを確認したが、テントは見当たらず、胃の痛みも忘れて大声で叫ぶ。力を振り絞った声には何の返答もなく「いったい、何処にテントを張ったんじゃい?」と忌々しくなる。ケルンまで登ったら見通せるかもとガレ場を登ること数分。
 すると、心配したデイジンさんが迎えに来るのが見えた。無事にBCに辿り着くことができて、やれやれ。テントはどん詰まりの氷河の近くに張られていた。



山頂から。ヌプツェの大岩壁と右後ろの尖った山がローツェ峰


 翌朝は風もなく、晴天。
ハーネスを装着し、途中トラバースの雪面に注意しながらステップを刻み、ザイルでお互いを確保しながら、ようやく岩の稜線に到達した。
 頂上直下の岩場はデイジンさんがザイルを張ってくれたので問題なく、するすると頂上に立つことができた。彼のザイルワークは素晴らしいもので、「クライマーって、なんとかっこいい!」と思ってしまいましたよ。


 さてさて、胃の痛みでゲロを吐きながら登頂したポカルデ登山。
BCに下山後、峠を越えてロブチェに行かなければならない。ヒマラヤ初デビューのフジちゃんとトモ君が「大きなエベレストを見たい!」と言ったからだ。私はエベレスト登頂前にカラパタールに登ったことがあり、二人には「でっかいエベレスト」をぜひとも見せてあげたかった。
 しかし、峠から見下ろすと、ロブチェの前に立ちはだかる氷河、モレーンの丘はアツプダウンが相当激しく、上からまる見えなので歩く気も萎える。
 二人はどんどん先に行き、私は彼らに励まされるようにして、夕暮れ前にロブチェに到着したときは、正直ほっとした。
 しばらくして、ペリチェ経由でロブチェに入ったゴットン隊長と合流し、再会を喜ぶ。「明日は休養!」と言う隊長を説得し、翌日はエベレスト街道のどん詰まりの宿、ゴラクシェルプに向う。カラパタールために登山行程を詰めたかった。




 ゴラクシェルプに到着した翌朝、「でっかいエベレスト」を拝みにカラパタールに登る。3時間の登りは問題なくクリア。フジちゃん、トモ君と私の3人は、下山途中から方向を変えエベレストBCに向ったが、ガイドのデブラムさんがルートを間違え、プモリへのロックガーデンを下り出した。ヤクの荷揚げのノーマルルートからBCに入るのではなく、見晴らしのいいモレーンの上のルートを使いたかった。
「違う!このルートじゃないっ」と叫んで引き返す。「もっと下ったところにルートがあるはず!」と下りだしたが、10年前のプモリのBCを通ったときのモレーンの丘がなんだか違って見える。
 ガイドは「OK、知っている」と何度も言ったが、宿で確認すべきだったと反省。天候も悪くなって、エベレストBCへ1時間向ったところで、宿に引き返した。宿に着いたら吹雪になって、まったくもう!遭難するところだったよ。
 この時も心配のあまり胃が痛くなった。なぜか怒ると早口の英語になる。英語の方がストレートで意思を伝えるのにはいいのかも知れない。
 
 まあ、ポカルデも成功したし、「でっかいエベレスト」も拝めたし、めでたし、めでたしの山旅でありました。



カラパタール5550mから望む「でっかいエベレスト」


どう?この嬉しそうね顔!