旅立ち

 同僚の中国語教師のインがバンコクに発った。
大学の修士課程の試験に合格し、最終の面接試験を終えてバンコクで結果待ちだ。
 彼女は国からのボランテア教師で、国と学校からダブルサラリーだった。上海の大学へ通う弟のために仕送りし、自分でも修士課程に行くために貯金をしていた。誘ってもどこへも出かけないのは勉強していたからだ。浮ついたところのないしっかり者で、中国人らしく勤勉で芯が強い。。
 タイ語を話せるインが、すべてにおいてわたしの力になってくれた2年間だった。
学校に到着した朝、インはドアをノックし「なにか食べ物ある?」と聞いてくれた。「ない」と言うと、ジュースとクラッカーを差し入れてくれた。それから、2年間、毎日一緒に食事をし、散歩して、いろんなことを語り合った。
 ここでの友人はインだけだった。ひとりになって寂しいけれど、また新しい出会いがあると信じる。ありがとう、イン。
新しい旅立ちが、あなたを幸せに導いてくれますように。