何を求めるか?

 アナがトクトクの荷台で緑の風をうけながら「何を求めているかが、はっきりわかった」と言った。それは、便利さでもなく、お金でもなく、汚染のない環境と美しさだと言う
 地方都市のコンケーンから戻り、カウオンに向うトクトク(バイク改造タクシー)に乗り、ほっとしたのは事実だ。流れゆく田園風景を二人で目を細めながら眺めていた。
 都会にはものが溢れ、忙しく人が行き交い、人々はより良い暮らしやものを買うために仕事を増やさなければならない。また、家族や教育のために自分の時間をお金に換える。わたしたちもまた、長い間家族を支えるためにそうせざるを得なかった。
 それらのことは終ったのだから、自分の時間を新しい経験のために、また必要としてくれる人のために使うのは良いアイデアだと思うと言った。
 アナはフランスの自宅の殆どのものを整理し、残った荷物をコンテナ業者に預け、自宅を人に貸し、スーツケースひとつの衣類とパソコンをもってタイにやってきた。
 親孝行な二人の息子に呆れられているらしいが、家で同じ生活をするのはつまらないと言う。「まあ、疲れたら我が家に戻って年金暮らしよ」と明るくたくましい。う〜ん、あっさりとしていいかも。