Is not knowledge.

「英語を話すことは知識ではない」と、新しく赴任してきたタイ人の英語教師が言った。
彼女が癖のないきれいな英語を話すので、どうしてそんなに上手なの?と尋ねたのだ。「英語が好きなので映画をよく見たのよ。言葉は訓練よ、知識ではないわ」とさらりと言った。かっこいいじゃん!
 たしかに、積み重ねと訓練だろう。彼女に誘発されて、苦手な英文法の勉強を始めた。分厚い参考書を日本帰国のときに開いた。よし、頑張ってみようと毎日開いて問題を解いていった。飛行機のなかでも、バスの待合でもちまちまとまめに開き、う〜ん、ひさびさに英語を勉強している感じ。以前ちんぷんかんぷんだったものが、するすると頭に入ってきて参考書は昨日終了した。
 映画も同じものを繰り返して見始めた。映画の場面ひとつひとつの、いろいろと細かなことに気がついて、意外な発見がある。
「ユーガットメール」を見ていて、絵本ショップに好きな絵本が飾られているのを見つけた。
 ひと夏、アラスカの森のなかで暮らしたときのお気に入りの絵本、「HUSH!」だ。タイの田舎の暮らしの挿絵で、お母さんがこどもが昼寝をしているので、「し〜っ 静かにして」と動物に言うおはなしだ。近所のダナが、読み聞かせのテープも貸してくれて、毎晩、暗い森のなかで人の声に温まって眠りについた。あのとき、タイで暮らすことになるなんで思ってもみなかった。