逞しさ

 中国人の若者が向いの学校に赴任してきた。
同僚の中国語教師のインが電話したら、彼はアパートのぼろさかげんに驚き、また道路に面しているため車の騒音で眠れないと両親に電話して泣いていたそうな。おまけに部屋には30cm以上もあるトッケーが住んでいるとか。
 そうそう、誰もがみんな最初の日には泣くんだよね、とインと顔を見合わせる。スコットランドから来たアデルもそうだったし、インだって最初の日は泣いたそうな。
 今の中国人の若者世代は一人っ子政策で大事に育てられたお嬢さん、お坊ちゃんが多い。そして、都会の有名大学を卒業しても就職難だ。中国では若者に語学教師のボランテアを推奨し、アジア圏に送り出している。国が給料やチケット代を負担し、赴任先の学校でも給料が貰えるので中国で働くよりは高くなる。インもその一人だ。
 そして数日後、カウオンの町はずれにある職業専門学校に中国人のボランテア教師が赴任してきた。偶然、インが湖の近くで見かけ声をかけたら北京から来た女の子だったという。
彼女は、「タイでボランテア教師」と聞いて、写真のリゾートをイメージし、美しい海の側で働けると喜んで赴任してきたら、山奥の、またその町外れにある職業専門学校だったと言う。インが相も変わらず「かわいそうなのよ」と世話をやいている。様子を見に行くというのでインに同行した。
 すると、こんなところになんで新しい学校が?と思うような町の外れの森の中にあった。回りには、のどかに牛がたむろしている。学校の宿舎はまあまあきれいで、なんとかなりそうな感じだ。そして、彼女もまた着いた日に泣いたそうな。でも、両親から電話が来たときは心配かけまいと「だいじょうぶだよ」と答えたそう。女の子は強いね。インも「わたしも強くなったよ」と言う。
中国人の若者たちとママチャリ・サイクリングをし、夕飯を一緒に食べた。