雨の匂い

<Before the rain>と言う映画をみたことがある。
荒れ地に建つ修道院で、自給自足の生活をしている修道士が逃亡してきた美しい少女をかくまう話だった。
修道士が草摘みをしている背後から、雲から低くたちこめ、乾いた大地に雨のしずくが落ちて来る。湿った雨の匂いがあたりをつつみ込む。
記憶に切り取られた、そのシーンだけを覚えている。映画って切り取られた一枚の写真なのかも。

タイの雨期はダイナミックにやってくる。雷が空に弾けんばかりに鳴り響き、突然底が抜けたようなどしゃぶりになる。どこもかしこも白く煙る。これもまたいい。
匂いは確かな記憶を甦らせる。タイの雨も遠い日に一枚の写真として記憶が残るのかもしれないね。