機織り

郵便局の帰りに遠回りしたら、機工房を見つけた。
機にタイシルクの糸が張ってあり自転車を止めた。ご夫婦で織っているらしい。とても複雑な文様で触感もいい。
山に登る前は機織りをしていた。編み物好きが高じて糸つむぎを始め、手紬の糸を染めて家族の手袋やセーターを編んでいた。自分で紡いだ糸を布にしたくて、織作家のマリさんに弟子入りし、5年かけて織の全行程を学んだ。糸の織りなす色の変化がおもしろかった。織物作家の志村ふくみさんに惹かれた。彼女の織る美しい織物と文章に憧れたのだ。休日は終日糸と格闘し、これが仕事だったらどんなにか幸せだろうと思っていた。
しかし、山に登るようになり、機織り機に糸が張られる事はなくなってしまった。機織り機はテントや寝袋の物干場と化し、そしてただのストレッチのバーになってしまった。
こつこつと織った美しい織物には織手の時間が込めらている。この小さな工房で織られた布もドレスに仕立てられ、誰かを美しく装うのだろう。職人に憧れたけどなれずに、遠くの国で日本語教師なんぞしている。まっ、いいか、道草人生も。
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