マイペンライの国

マイペンライ」は気にしないでと言う意味だ。相手の言った事にたいして「マイベンライ」と言うのは。「そんな、気にしなくてもいいですよ」と寛大な態度を示すことになるが、自分がした失敗にたいしても「マイペンライ」と言う。「これって、どうよ! あんたの失敗だろうが・・・」と怒りたくなる。
 まだ学校へ赴任する前から、このマイペンライの洗礼を受けた。バンコクの騒動で直接ノーンカーイの事務所に入り、そこに滞在していた私は、カラシーン学校の外国語の責任者であるチュンポーン先生に電話連絡をした。英語で「私はノーンカーイにいるので、学校の車を手配してくれる日程が分かったら知らせてほしい」とお願いした。彼は、「五月三日に会議があり学校へいくので、その会議で車を回す日が決まるので決まり次第連絡します」とのことだった。しかし、数日が経ち、一〇日に授業が始まるというのに、七日になってもなしのつぶてで電話も通じないしメールにも返事がない。いささか不安になり、お隣さんに相談した。そしたらガティ先生が「チュンポーン先生は海外旅行に行き、今週はいないよ」とのことだ。「なんていうことだ。責任者がそんなことでいいのかよ」、と言いたくなる。「学校は一〇日、月曜から始まるので、ビザの手配もあるから早くこちらに来てください」と言っていたのはなんだったのか。車の手配もせずに、海外なんかでのんびりしていていいのかい?私のビザの手配はどうなるのだ、と言いたくなる。憤慨していても仕方がないので、その下で働く、ゴッティ先生に連絡を取った。彼女は大学院生でもあり、「今、大学で英語の勉強中だから、一週間遅れるのでよろしく」とのこと。どちらも、こちらもなんと言うことか。私ひとりで一週間の授業をどうしろというのか。学校は一年から六年生まであるので、各学年のスキルが違うだろうが。まあ、それは後で考えるとして、今は学校に行く足をなんとかしなければならない。彼女にカラシーン学校に連絡をして車の手配をしてくれるよう頼んだが、またもや連絡がない。
 どうだろう、月曜日までに学校に入るのは難しいことになりそうだ。そうか、そちらがそうなら、この際、迎えに来るまでタイ語の勉強をしよう、焦ったって仕方がないのだ。ここはマイペンライの国だ。いざとなったら、サムロー(三輪車)に荷物を積んでトコトコ出かけることにしよう。ここ、ノーンカーイからカラシーン学校まで、車で3時間半ならサムローなら倍の時間がかかりそうだ。授業に遅れたって「マイペンライ」だ。なんだか、またとんでもないことになりそうだと思っていたら、突然今日迎えがくるこになった。