早春

北国の春はぐずぐずとして遅い。りんごの味がおちてくるとそろそろ春かなと思う。さくさくと甘い蜜を持っていたりんごがちょっと味が薄れる。
三月になると空はやわらぎ色めいてくる。山の端は薄い水色に彩られ、日ごとに色彩は増してゆく。
札幌の街はどこからでも山が見える。雪溶けで汚れたアスファルトを車がスピードを上げて走り、雪が消音していた路面は一挙に騒音がひどくなる。バス発射のクラクションが、ぱぁ〜んと軽やかに弾んでピルの谷間に反射して空に抜けてゆく。
路肩の残雪が黒く縮んで、もう春はすぐそこ!大地も木々も眠りから覚め、もうすぐ木の芽も膨らんで薄緑に萌えだす。春が来た、春、は〜るだよ!