辻まこと

<山と森は私に語った>を読んだ。
声を出して、あははは!と笑ってしまった。
辻まことは思想家の辻潤伊藤野枝の間に生まれた。たぐいまれな才能を持ち、絵、文、山やスキー、渓流釣りを愛する自由人である。その文章は痛烈に諷刺的であるが、全く嫌みがない。笑える本を書ける人は少ない。彼が正直に生きた人だからだろう。
ー山登りの思想—(アルプ教室講演)
『人間はなにがきっかけで、いつどこでどういうことをするかなかなかわからない。多分私だけじゃないでしょう。——』そうそう、私だって山なんて登るとは思わなかったし・・
『雪の山と森は私に語った。必要なのは情熱と夢ではなく冷戦な目覚めだと、愛することではなく増悪を超える事だと。多弁な歌やマイクロフォンの声ではなく沈黙だと・・・。
目標を失くし錯雑した感情を病む私の心は、この凍結した白い永遠に救われる。』
辻まこと(1913-1975)