幸福

幸福のイメージは子供のころに培われる。
憧れたのは、窓辺に赤いベコニアが並べられた山荘や緑の丘で、スイスの絵本作家カリジェの絵のような風景だった。「フルリーナと山の鳥」の野鳥を保護して森に返す話や「大雪」の山の家でお母さん靴下を編んでいる絵や敷物に目が留まり、こんなインテリアにして家族と家畜を飼って暮らしたいと憧れていた。
お母さんがパンをこねている絵がほのぼのと温かく、こんな家庭をつくりたいと思っていた。
不思議なものだ。いまも粉にまみれていると幸せで、業務用の粉を買ってパンやピザを焼いている。パンやクッキーが焼ける香ばしい匂いがしあわせを運んでくる。