旅の手帳

旅に出るときフィールド用の野帳を使う。
表に海外の友人から届いた切手を貼り、国や山のタイトルをつけたものをパスポートと一緒に持ち歩いた。
引き出しがいっぱいになり、出し入れが出来なくなったので、引いてひっくり返した。いろいろな国の匂いや、ざわめきが手帖の間からこぼれ落ちた。
切手がとてもきれいだ。遠くの国から旅をして届いた切手が、また手帖に貼られ旅をしている。50冊ほどあり、手帖の見返しに、旅のメモやレシートがごちゃごちゃと挟んだままになっている。
手帖たちは狭い引き出しの中に詰められ、窮屈な思いで異文化コミュニケーションをしていたかもしれない。床に散らばり開放されて喜んでいるように思えた。
ページを開くと時間が甦った。タイムトリップして旅をした国にいる。日常が横に引かれる線だとしたら、旅はその線上にジグザグと縦に刻まれた線だと思う。その刻まれた非日常の時間には凝縮された新鮮な感動が詰められている。