「戦争は女の顔をしていない」スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ

 『言葉がきこえることがある……歌だったり……女の人の声だったり……私が感じているいたことがそこにあるの。何か似たものが……戦争の映画を見ても嘘だし、本を読んでも本当のことじゃない。違う……違うものになってしまう。自分で話し始めても、やはり、真実ほど恐ろしくないし、あれほど美しくない。 
 戦争中どんなに美しい朝があったかご存知? 戦闘が始まる前……これが見納めかもしれないと思った朝。大地がそれは美しいの、空気も……太陽も……』ーーーオリガ・ニキーチチュナ・ザベーリナ軍医(外科)

 
 第二次世界大戦中、ロシアはドイツに侵略され、男たちはみな戦場へ駆り出され、女性たちが戦場に赴いた。「ボタン穴から見た戦争」についで、聞き込みを記録した戦争のドキメンタリーである。


 祖国のために戦う、という強い意志を持ち、血と泥沼の修羅場を生き延びて村に戻っても、非難の目を向けられトラウマを抱えたまま生きなければならぬ過酷さ。人間の尊厳という言葉が重みのない薄っぺらなものでしかない状況、それが戦争なのだ。
 忙しい、と言いながらページから目が離せなくなり、深く重すぎて眠れなくなった。