老老介護


 同年代の山友が母親の介護をしているという。
ケーナの演奏会のためディサービスに頼んだが心配だと電話していた。その言葉づかいが幼い子に諭すようで、頬が緩んだ。訊くと認知症だという。


 彼の母親は、現在のことはあいまいだが過去のことをはっきりと憶えていて、自分は子供で母親と一緒に暮らしていると思っているらしく、毎日「かあさんは何処行った?」と聞くんだそうだ。「今、買い物だよ」とか答えて話を合わせるという。「大変だよ〜、毎日が」虐待するのが人ごとではないという。


 田舎で育ったので人の生き死にを身近で見て来た。
赤ん坊が生まれると産湯を使わせるのを見に行ったし、お向かいの双子の赤ん坊が生後まもなくして亡くなり、小さなみかん箱の棺に可愛らしく治まったのも見ていた。
 老人の介護は家族がしていて、農作業もあり大変だったと思うが悲惨さはなく、人は温かみがあったと思う。


 昔は列車の本数が少なく時間がわりにしていたので、ボケたばあさんは列車の音が聞こえる度にご飯を食べると言い張ったり、トマトをタンスの中に隠したり、嫁さんが介護しないので旦那が自分の母親のオムツ替えをしたりしていると言うのも聞いていた。
 ストレスはあったと思う。でも地域の人たちに話すことでバランスがとれていたのではないだろうか。


 なんだかね......考えされられました。自分の息子は山友のようにはならないことだけはハッキリしている。