「命がけで南極に住んでみた」ゲィブリエル・ライダー

『純粋で何もない場所で暮らせば、人間のおごりや傲慢さは消える。自然の力に阻まれる経験を積めば自分の存在がいかにちっぽけなものであることを学ぶから、人間などはかないものでとても威張れたものでないことを悟る。』ーーゲィブリエル・ライダー



 久々にわくわくする本に出合った。山で感じることと良く似ている。
イギリスのノンフィクション・ライターが南極大陸取材をもとに書いた本で知識欲と好奇心を100%満足させてくれる。
 南極を調査することで地球の将来を予測できるという。掘り下げ方も上手いし、一番楽しんでいるのが取材した本人だろうなあ、というのが伝わってくる。訳者の仙名紀(せんな おさむ)さんは、原書を読んであまりにも面白いので自分から出版社に売り込んだのだそう。



 南極は氷で覆われた大陸で政府はない。夏の2ヶ月間は白夜であとの10ヶ月は闇の中である。訪れるのは研究者、生物学、地質学、海洋学、物理学、天文学、雪氷学、と物好きな観光客でそれも夏の間だけ。越冬する人は1000人ほどとか。



 2005年の12月、ビンソンマシーフ登山のために南極大陸へ飛んだ。
と、いってもダイレクト便などなく、北アメリカから南アメリカのチリへ飛び、そこから最南端プンタアレーナスに飛んだ。そこで南極大陸のレクチャーを受け、1週間の天候待ちをしたあとで、ようやくロシアの軍用機で南極大陸へ飛ぶ事ができた。
 飛行機は氷のリンクのような大地に着陸し、後部の観音開きのドアが開け放されると、銀色に輝く氷原が飛び込んで来て目がくらみそうだった。



 飛行機の待合室なのか、かまぼこ形の基地で、南極点へ行くという日本人観光客と出会った。きっと南極に魅せられた一人なんだろうね。プンタアレーナスからの観光船があるんだとか。
 アムンセンとスコットの南極点到達の競争はあまりにも有名だ。シャクルトンの「エンデュアランス号漂流」は南極大陸横断の探検隊の話で、船は破壊し沈没したにかかわらず、ひとりの死者も出さずに生還した。


 あのとき、山以外に興味はなく「もの好きだわね〜」としか思わなかったけれど、山登りだってたいして違わないわね、といまは思う。



エンデュアランス号漂流 http://www5a.biglobe.ne.jp/~outfocus/book%20story/endurance/endurance.htm
アムンセンとスコット http://www.geocities.jp/rekiroken/yuichi-t/tanken/amundsen_scott.htm